長崎県新上五島町がいじめ自死の第三者調査報告書をサイトで公表、改めて問われる再発防止の姿勢
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新上五島町が第三者調査委員会調査報告書をサイトで公表
2014年1月8日、長崎県新上五島町の町立奈良尾中学校3年生だった松竹景虎君(当時15歳)がいじめを苦に自死しました。
長崎いじめ自死訴訟とは、景虎君の遺族であるお父さん・お母さんが学校を運営する新上五島町(しんかみごとうちょう)及び長崎県を被告として長崎地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した事案です。私も遺族側弁護団として訴訟に係わり
2017年9月4日に和解が成立しました。
裁判の場における解決後も両親による真相究明、いじめ再発防止の取り組みは続いています。
その成果の一つとして、長崎県新上五島町が2018年1月31日、「いじめ見逃しゼロをめざして」として第三者調査委員会調査報告書を町のウエブサイトで公表しました。
・新上五島町公表「第三者調査委員会調査報告書等」
問われる新上五島町の姿勢
ただし新上五島町は、調査報告書の公表にあたり、以下のような注意書きを付記しました。
この調査報告書には、当町にて、事実の確認ができていない箇所が含まれています。また、第三者調査委員会に裏付け資料や会議録の提出を求めましたが、応じてもらえませんでした。
そのため、報告書記載の事実の中には、当町として説明責任を果たせない事実も含まれていますが、再発防止を願う一念から、改めて公表することにいたしましたので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
新上五島町は第三者委員会の設置者であり、第三者委員会の報告書を受け止め、裁判においても第三者委員会報告書の認定した事実を前提に和解に応じました。
そうである以上、調査委員会報告書の公表にあたり、「事実の確認ができていない箇所がある」などと言及することは自己矛盾ですし、自己弁解的な姿勢と言わざるを得ないでしょう。
一方で、新上五島町は、「本町は、景虎君に対する、悪口、無視、嫌がらせ行為等のいじめが存在したこと、また、教職員が景虎君に対するいじめに気付き得たことを認め、今後の再発防止を誓う」とした上、「再発防止、特にいじめ見逃しゼロを目指し、教育委員会、学校、家庭と一体となって、最善を尽くしてまいりますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます」とも述べています。
その再発防止に向けた取組を教育現場でいかに実践していくかが問われていますし、それこそが景虎君の無念の死に報いることだと思います。
遺族は同級生に読んでもらい、息子に「ごめんね。もういじめないよ」という一言を言ってもらいたいと語った・・
町は16年3月に報告書をいったんHPで公開したが、3ケ月後に遺族に説明をしないまま一方的に削除した。遺族が再公開を求めたが、町は「報告書に関係する人から事実誤認があるとの声が寄せられている」として応じていなかった。
両親によると、報告書再公開に向けた協議で町側は「町として説明責任を果たせない事実も含まれている」などの文章を表紙に掲載する条件を提示。遺族は「報告書の内容が虚偽との印象を与える」として削除を求めたが、町は応じず、いじめ防止措置を怠ったことを町側が認めた点などを盛り込んだ損害賠償訴訟の和解内容も掲載することで決着した。
松竹さんの父裕之さんは「町は自らが設置した第三者委の報告書を基にどうすれば息子を救えたのか真摯に検証すべきなのに、それを否定するような記載をしたのは許せない」と厳しく批判した・・
裕之さんは「息子がもし帰ってきたら仲間に入れてもらえるような教室を作るために、息子とどんなやりとりがあったのかを同級生から聞きたい」と語った(2018年1月31日付け毎日新聞・樋口岳大)。
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