「少年院4教官逮捕」の深層と対策
広島少年院の4名の教官(田原克剛43歳、野畑勝也32歳、松本大輔29歳、菅原陽26歳)が、2008年3月から2009年3月にかけて、16歳から17歳の少年4名に対して、暴行を加えていたとして逮捕されました。
暴行の内容は、殴る、蹴る、首を絞める、紙おむつをはくように強要し拒絶すると顔を殴る、トイレに行かせずに失禁させるというものです。
調査の結果、2008年度の1年間にわたり、収容されている少年の約半数50名に暴行を加えていたことも判明しているようです。しかも、「少年院の秩序維持に都合がいい」ということで、他の教官達も事実上、黙認していた疑いも持たれています。
注意すべきは、逮捕した4教官の前任地でしょう。少年院教官は、転勤で他の少年院を歴任します。田原容疑者が43歳、野畑容疑者が32歳ということは、ある程度の経験があると思われ、他の少年院でも暴行を行っていた疑いも捨て切れません(全国の少年院一覧)。
平成11年から平成12年にかけて九州管区の少年院(佐世保学園、福岡少年院、大分少年院、人吉農芸学院、中津少年学院、)を視察訪問しました(詳しくは、『少年事件付添人マニュアル第2版』(日本評論社)241頁参照)。
その時印象的だった佐世保学園の教官の言葉は次のようなものでした。
「ここに来た少年は必ず今よりよくなります。その自負は私たち少年院も持っています。しかし問題は少年院を出たあとなんです。身につけた自尊心、習慣、前向きな心、人を思いやる気持ち・・それが社会でも継続できるか。そこは自信がありません」
そのほかにも私が個人的に知り合った少年院の教官は、いずれも能力が高く、少年に寄り添う姿勢が顕著な方ばかりでしたが、今回のような事件が起きると、少年院の教官や制度そのものに対する疑念が生まれかねません。
動機の解明、黙認していた他の教官の処分、そして他の少年院時代の同種暴行歴の有無など徹底的に捜査して頂きたいと思います。
なお、法務省は、少年院に収容されている少年が処遇上の苦情や不服を申告できる制度を導入する方向で、少年院法の改正検討を開始したようです。
付添人が就任していたケースについては、付添人が少年院を訪問して面会してあげたり、そこまで難しくとも、退院した後、状況を尋ねたりしていれば、本事件も、より早く発覚していたかもしれません。私もそこまでできていませんので、今後担当した少年で収容された子については、何らかのアプローチをしてみようかなと自省をこめて思ったりしました。
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