脱毛・脂肪吸引・二重まぶた手術・豊胸など美容医療がクーリングオフの対象に、2017年12月1日から改正特定商取引法が施行
目次
美容医療トラブルの傾向~20代後半から30代前半女性が突出
全国の消費生活センターに寄せられる美容医療サービスに関する相談は、2013年に2000件の大台を超えた後、4年に渡って2000件台で推移しています。
契約当事者としては女性が80%(9116件)を占めていますが、最近は男性の相談も少なくありません。
相談内容としては、男性は、包茎手術、薄毛治療・ひげ等の脱毛が上位を占め、女性は美容整形、医療脱毛、豊胸手術等が上位を占めています。
国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインで結んでデータベース、「PIO-NET(パイオネット)」によると、20歳代が 3897件(36%)と最も多く、30歳代(2426件、22%)、40歳代(1983件、18%)、50歳代(1183件、11%)と年代が上がるにつれて減少します。
詳細に見ると、20代後半から30代前半の女性の相談件数が突出して多くなっています。
美容医療サービスとは、医師による医療のうち、「専ら美容の向上を目的として行われる医療サービス」を指し、医療脱毛、脂肪吸引、豊胸手術、二重まぶた手術、包茎手術、審美歯科等が主な施術(医学的処置、手術及びその他の治療)をいいます。
美容医療サービスがクーリングオフの対象に
美容医療サービスのトラブルを減少させるための法規制の必要性が議論され、特定商取引に関する法律の改正が行われ、2017年12月1日に施行されました。
その結果、2017年12月1日以降は、特定継続的役務提供の要件に該当すれば、特定の美容医療サービスについてもクーリング・オフ等が可能になります。
つまり契約書を受け取った日から8日間はクーリング・オフが可能になるわけです。
具体的な要件とは
要件としては、特定商取引法施行令(政令)によって、サービス提供期間としては「1カ月を越えるもの」、そして契約金額としては「5万円を越えるもの」とされています。
そして特定商取引法施行規則(省令)によって美容医療の方法としては、以下のように定義されました。
脱毛: 光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法
にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化: 光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減: 薬剤の使用又は糸の挿入による方法
脂肪の減少: 光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
歯牙の漂白: 歯牙の漂白剤の塗布による方法
具体的なトラブル事例とは
消費生活センターに寄せられている具体的なトラブル事例としては下記のようなものが報告されています。
【事例1】約 1 年前に医療脱毛を契約したが、契約期間について説明はなく、契約書も渡され
ていなかった。突然期限切れだと言われ納得できない【事例2】クリニックでの医療脱毛をクーリング・オフしようとしたが、対象外と言われた
【事例3】クリニックのシミ取り施術を契約したが、痛みを感じ怖いので中途解約したい
2017年12月1日以降の契約であれば、事例1の場合には契約書を交付することが求められますから、交付がなければクーリングオフが可能です。
事例2についても同様でクーリングオフが可能です。
事例3は、特定商取引法の特定継続的役務提供として、定められた解約料を支払って中途解約が可能です。ただし解約料が定められていない場合や定められていてもその金額が過大である場合には、さらに交渉が必要になることもあるでしょう。
即日手術は対象外に注意
裁判例においても即日施術など意思決定のための十分な時間がなかったケースについて医療機関の責任(説明義務違反)が認められたケースがあります。
まず「手術の内容」「合併症などリスク」「金額」「当該医療機関の評判」「自分の現在の状態」「自分の希望の実現可能性」などについて事前に十分に情報を収集しましょう。
そして医師から説明を受けた場合であっても、その施術を受けるかどうかについて決してその場で決めず、時間をかけて後日決めることが肝要です。
今回の法改正でも、対象は継続的な契約ですから、即日施術は対象になりません。その意味でも慎重に意思決定する必要があるといえるでしょう。
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