肝硬変・重度肝硬変患者への支援が予算化へ、平成30年度予算案が閣議決定
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平成30年度予算案が閣議決定
政府が2017年12月22日、平成30年度予算案を閣議決定しました。平成30年度肝炎対策の予算案は168億円となり、平成29年度予算額からすると15億円の増加になっています。
肝炎対策予算の基本的な考え方は、「肝炎対策基本指針」に基づき、肝硬変・肝がんへの移行者を減らすことを目標として、肝炎医療、肝炎ウイルス検査、普及啓発、研究などの「肝炎総合対策」を推進するものになります。
肝がん・重度肝硬変患者への支援
主に予算が増加した項目は、「肝疾患治療の促進」です。
その中でも、「肝がん・重度肝硬変の治療研究の促進及び肝がん・重度肝硬変患者への支援のための仕組みの構築」として新規予算10億円が計上されました(概算要求は13億円でした)。
B型やC型肝炎ウイルスによる肝がん・重度肝硬変の特徴を踏まえ、患者の医療費の負担軽減を図るもの。その上で、肝がん・重度肝硬変治療にかかるガイドラインの作成など、肝がん・重度肝硬変の治療研究を促進するための仕組みを構築するための予算です。
実施主体は都道府県で、対象者は、B型・C型肝炎ウイルスに起因する肝がん・重度肝硬変患者 (所得制限があり、年収約370万円未満を対象)。
対象医療としては、肝がん・重度肝硬変の入院医療に限られます。
具体的には、過去1年間で高額療養費の限度額を超えた月が 4ヶ月を超えた場合に、4ヶ月目以降に高額療養費の限度額を超えた月に係る医療費に対し、公費負担を行うというものです。
これはB型肝炎原告団・薬害肝炎原告団・日肝協が強く求めていた医療費助成。肝硬変・肝がん患者の医療費助成のためのまずは1歩と評価できるでしょう。
ただし概算要求時からの主な変更点もいくつかあります。
例えば、財源負担は、概算要求時は事業費(国10/10)事務費(国1/2地方1/2)を要求していましたが、事業費と事務費共に、国1/2地方1/2負担となっています。
また事業実施時期としては平成30年12月開始とされ、医療費の予算額も4か月分のみの計上にとどまっています。
さらに都道府県のシステム改修費が概算要求では計上されていませんでしたが、予算案ではシステム改修費が計上されています。
実質的な治療費の支援額は削られていると言わざるを得ず、まだまだ不十分な状況であり、今後も国の対応・予算化を注視する必要があります。
その他の項目
肝炎対策予算のその他の項目は以下の通りです。
肝炎ウイルス検査と重症化予防の推進 40億円(前年予算39億円)
地域における肝疾患診療連絡体制の強化 6億円(前年予算6億円)
国民に対する正しい知識の普及 2億円(前年予算2億円)
研究の推進 37億円(前年予算37億円)
この中で「地域における肝疾患診療連絡体制の強化」としては、「肝炎情報センターによる支援機能の戦略的強化」があげられています。
国立国際医療センター肝炎情報センターによる肝疾患診療連携拠点病院への支援機能を強化して、地域の肝疾患医療や患者等の支援の向上を図るというもの。
肝疾患診療連携拠点病院の相談員が、肝炎患者からの相談に対する補助ツールとして活用することができる「相談支援システム」の構築や運用を行うことも予算化されています。