陣痛促進剤による被害を考える会が結成30周年記念シンポジウムを開催~子宮収縮薬による安全は確保されているか
目次
子宮収縮薬とは
無痛分娩による被害が大きく報道されるなど社会問題化しました。無痛分娩とは出産の痛みを麻酔で和らげることを目的にした医療行為。分娩時に痛みを感じたタイミングで硬膜外麻酔を行うなど、妊婦のニーズに応えるための差別化として積極的に取り組むクリニックもあります。
この無痛分娩の過程では子宮収縮薬を過剰に使用されるという問題も指摘されています。
子宮収縮薬とは、子宮平滑筋を収縮させて、人工的に子宮収縮を引き起こし、陣痛を促進、増強させたりする薬剤です。 代表的なものは、オキシトシン製剤(商品名「アトニンーO」、「オキシトシン注射液」)があります。
子宮収縮薬の副作用には過強陣痛があります。 この過強陣痛によって子宮破裂や胎児仮死が発生することもあります。
そのため、「産婦人科診療ガイドライン-産科編2011」では、分娩誘発・促進時など子宮収縮薬の使用にあたって「使用する必要性(適応)、手技・方法、予想される効果、主な有害事象、ならびに緊急時の対応などについて、事前に説明し、同意を得る。その際、文書での同意が望ましい。口頭で同意を得た場合にはその旨を診療録に記載する」とされています。
また「産婦人科診療ガイドライン-産科編2014」では、「子宮収縮薬使用を考慮する場合、『子宮収縮薬を使用しない』という選択肢もあり得ることが大半である。そのため、使用に際してはインフォームドコンセントを文書による同意を得ることと、有害事象を最低限に抑制することが求められている」とされています。
そして産科医療補償制度の再発防止に関する第3回報告書でも、「子宮収縮薬について」を取りまとめてインフォームドコンセントの重要性について提言されています。
そのほかにも、ガイドラインでは、投与開始前から分娩監視装置を装着すること、基準範囲内で投与を開始すること、メトロイリンテルと併用する場合にはメトロイリンテル挿入後1時間以上経てから投与を開始することなど様々な確認事項が記されています。
それにもかかわらず今だ不十分なインフォームドコンセント、不適切な使用などによる子宮収縮薬による被害が後を絶ちません。
裁判例は数多く見受けられますが、最近の判例としては、平成28年8月3日広島地方裁判所福山支部判決が、陣痛促進剤の注意事項に従わず、一度に多くの量を投与した過失によって低酸素状態に曝したと認定した上、新生児仮死状態で出生した児に脳性麻痺による障害を後遺したとして医療機関の責任を認めています。
30周年記念シンポジウムが開催
陣痛促進剤による被害を考える会は、被害者の出元さんらが立ち上げて30周年を迎えました。
出元さんは先日福岡で開催された薬害被害者連絡会のシンポジウムにも参加されて、被害を訴えました。。
その陣痛促進剤による被害を考える会が設立30周年記念シンポジウムを12月2日(土曜)13時30分から17時30分まで日比谷コンベンションホール(東京都千代田区日比谷公園1-4)で開催します。
第1部の講演から被害報告、そしてパネルディスカッションと多角的に掘りさげる内容になっているようです。
【第一部】講演
出元明美(当会代表)基調報告「会30年の歩み」~多くの事例から学んでほしいこと~
迫田朋子(ジャーナリスト)マスコミで初めて促進剤被害を取り上げた元NHK番組キャスターとして
貞友義典(弁護士)陣痛促進剤被害訴訟に数多く関わって
勝村久司(当会世話人)産科医療補償制度の再発防止委員会委員として【第二部】被害報告
司会 須加厚美(弁護士)
1 帝切既往者なのに陣痛誘発を行い子宮破裂、子宮摘出し児は2歳で死亡
2 PGE2錠の被害 分娩監視装置の不使用、児は出生後にまもなく死亡
3 PGF2αの大量使用による子宮破裂で、子宮摘出
4 アトニン-Oの誘発分娩で脳出血を起こし、1ヶ月後母体死亡
5 無痛分娩で子宮破裂し子宮摘出、児は間もなく死亡【第三部】パネルディスカッション
コーディネーター 廣田智子(弁護士)
「陣痛促進剤使用の分娩事故状況は、この30年で何が変わり、変わっていないのか」
第一部講演者に加え 岡いくよ(関西学院大学社会学研究科・助産師)
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