歯科の感染対策を考えるシンポジウムが開催、ハンドピース取替不徹底に見られる感染対策の現状と課題
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歯科におけるハンドピース取替の不徹底
歯科治療は観血的処置を伴うことが多く、患者の血液や唾液との接触は不可避になります。そして日常診療では注射針・探針・リーマーなどの鋭利な器材を用いるため、針刺し・切創・器具刺し事故などが起こりやすい環境にあります。
そのため、器具の洗浄や滅菌による患者間の感染防止、さらに操作時の医療スタッフへの指導・配慮も必要になります。
ところが、3年前、歯科のハンドピースが約7割の歯科医院で患者毎に取り替えられていないと報道され、社会問題になりました。
ハンドピースとは、歯科用回転切削装置のこと。バーなどの回転切削工具を先端部に装着して、医師が切削位置・圧を制御するため、手に持って操作する器具になります。
水と空気が噴き出すようになっており、動きを止める際、口中の液体を吸い込む現象が確認されています。そのため、患者毎に取り替えるべきとされているものです。
それを受けて、厚生労働省は都道府県等に対して、「依然として院内感染対策の取り組みの徹底が不十分」として、取替え徹底を求める通知を出しました。
ところが通知後も、全国アンケート(厚生労働省研究班が実施して700施設から回答)によると、なお52%が患者毎に取り替えられていない、つまり減菌されていないという実態が判明しています。
予防接種B型肝炎訴訟原告団・弁護団の取り組み
B型肝炎訴訟は、幼少期の集団予防接種で感染した事件。注射針の連続使用を行わないよう求める通達が出された後も、現場では徹底されないまま長期間が経過したため、感染被害が拡大したものです。
そこで原告弁護団は訴訟による被害救済のみならず、医療における感染症対策の徹底も求めるなど再発防止にも力を入れて取り組んでいます。
全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と厚生労働大臣との大臣協議において、前塩崎厚労大臣は、この問題について「コストがかかることは間違いないが、命とコストを比べると、命の方が大事と考えるべきだ。診療報酬改定に向けて、中医協でよく議論してもらう、皆さんの声を保険局の方にしっかりと伝えていく」と回答しています。
歯科感染対策を考えるシンポジウムを開催
11月5日(日曜)「歯科の感染対策」を考えるシンポジウムが予防接種B型肝炎訴訟九州原告団弁護団の主催で、開催されることになりました。
歯科治療における感染リスクを減らし、より安全安心な歯科診療を実現するためには、標準予防策(患者の感染症感染の有無を問わない一律の滅菌・消毒等)が徹底される状況が実現される必要があります。
今回のシンポジウムは1部と2部に分かれており、第1部では、東京歯科保険医協会理事の濱﨑啓吾氏による「歯科の感染対策について」という基調講演が行われます。
その上で第2部はパネルディスカッションが行われ、福岡歯科保険医協会副会長の浦川修氏、集団予防接種等によるB型肝炎拡大の検証及び再発防止に関する検討会・構成員の梁井朱美氏が登壇します。
日時 2017年11月5日(日曜)
時間 14時から17時(開場13時30分)
場所 福岡センタービル10階会議室
(福岡市博多区博多駅前2-2-1)