薬害肝炎2009 4つの課題
2007年12月23日の政治決断、そして2008年1月の薬害肝炎救済法成立で解決への道筋が整った薬害肝炎訴訟。ですが課題は残されています。4つほどあげてみたいと思います。
1 糊を含めた早期和解成立
「全面解決」といっても、1人1人の原告にとっては、自分が和解成立するまでは解決ではありません。田辺三菱との基本合意後に、国が企業意見を待つために和解が遅れかけましたが、九州弁護団は断固はねつけました。今年も和解の遅れがないよう留意する必要があります。
特に重要なのはフィブリン糊の解決。フィブリン糊とは、フィブリノゲン製剤を糊状にして脳外科手術、心臓手術などに利用されていました。国はその感染力(危険性)を問題視して和解を遅らせているようです。
しかし岡村記念病院の報告では、84年10月から88年3月までの心臓手術において、輸血のみのケースのC型肝炎の感染は、92例中7例(7・6)パーセントにとどまりましたが、輸血とともにフィブリン糊を使用していたケースは、実に69例中29例(42パーセント)に達しました。
薬害肝炎救済法成立からまもなく1年を迎えるにもかかわらず、糊問題を放置することは国の新たな不作為というべきです。
この糊を含めた早期和解が裁判上では大きな課題です。
2 埋もれたままの被害
田辺三菱製薬の時期的にも(1964年承認だが1980年以降のみ)、データ的にも(一部の問屋のみ)不完全な報告でさえ、フィブリノゲンによる感染被害者は1万人を越えます。しかし、全国原告団の提訴人数は1300名弱。まだまだフィブリノゲンを投与されC型肝炎に感染したにもかかわらず、それを知らない被害者が多数います。
今年も掘り起こしをすすめ、追加提訴を進めていきます。
3 薬害肝炎の徹底的な検証
「何が行われ、何が行われなかったのか」。
薬害肝炎問題を徹底的に究明するための検証会議が行われています。
九州原告からも熊本の坂田さんが参加し、積極的に発言されています。詳細な議事録で議論状況を確認することができますが、なかなかおもしろい議論が行われています。
例えば、昨年11月11日の検証会議では、「1964年のフィブリノゲンの承認審査資料を見ると、驚くぐらい杜撰で研究班もびっくりしている。」、「市販後調査をアンケートはがきでやっていた問題。わたしども当時の医者のところにはそんな葉書は届いていなかった。」、「添付文書を読もうとしない医者が余りにも多い」「製薬会社の社員の倫理感についての教育が必要だ」など興味深い議論がなされています。
今年も検証の進捗を注視したいと思います。
4 恒久対策実現のための肝炎基本法の制定
最後の課題は、肝炎基本法の制定。停滞する国会論議、そして与党・野党のそれぞれの思惑から肝炎基本法の議論も進んでいません。
薬害肝炎全国原告団弁護団は、肝炎基本法の制定キャンペーンを開始しました。1月27日(火)28日(水)には国会を周り、肝炎基本法制定への理解を求める「国会ローラー」を実施します。
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