長崎県教育長が「裁判で解決が長期化した」と失言、中3いじめ自死問題
目次
長崎県教育長が裁判で長期化と答弁
長崎の中3いじめ訴訟が和解で解決しました。
・「長崎中3いじめ自死訴訟で和解が成立」(2017/9/5)
これに対して、長崎県の池松誠二教育長が9月21日、定例議会の一般質問で以下のように答えました(9月22日付け長崎新聞)。
(自殺から裁判での和解までに)3年かかってしまったことは、遺族の方々にとっては長時間お苦しみになったと思うけれど、やはり裁判になったことで(解決が)長期化した傾向がある
訴訟に至る経緯と訴訟経過
それでは本当に裁判によって解決が長期化したのでしょうか。
当時中学3年生であった景虎君が複数の同級生からの執拗ないじめを苦にして自死したのは2014年1月8日、3学期の始業式の朝でした。
この訴訟は、私も含めた弁護団が訴訟前の解決を行政に申し入れていました。
ところが新上五島町の代理人弁護士が2016年6月17日、「関係各所と協議した結果、第三者委員会の調査報告書には承服しがたい内容が含まれていることから、依頼者(新上五島町)は、現時点では同報告書の内容を前提としたご遺族からの損害賠償請求に応じることはできません」と示談協議を一切拒否したのです。
そのため御遺族はやむを得ず、2016年8月31日に提訴したものでした。
しかも訴訟は2016年10月31日に第1回期日が行われた後、数回の弁論・進行協議を経て、2017年9月4日に和解成立によって終結したものです。
裁判所の適確な訴訟指揮もあり、証拠調べ前に和解協議が開始して、いじめ訴訟としては11か月という異例の早さで解決しました。
池松教育長の答弁はこのような訴訟に至る経緯と訴訟経過を全く無視した、不正確な内容と言わざるを得ません。
遺族の反論
この教育長の答弁を受けて、長崎新聞が自死した景虎君のお父さんに取材しました。
お父さんは次のように教育長を批判しました。
裁判になったのは町が対話に応じなかったからだ。『裁判があったから長引いた』というのは認識違いで、県は裁判でも真っ先に『町の責任です』と逃げ出した。教育長の発言に消極的な姿勢が表れており、いじめの再発防止も望めない
そして長崎新聞の取材を受けた教育長は、「裁判のシステム上、結論までに相当時間がかかることを言いたかった。遺族はやむにやまれぬ思いで提訴されただろうし、提訴を否定するつもりはなかった」と釈明しました(9月22日付け長崎新聞)。
的外れな教育長の釈明~いじめ防止対策推進法に忠実に
自死から解決までの3年のうち2年は裁判前であったこと、裁判も町が訴訟前の解決を拒否したために遺族がやむを得ず訴訟提起したことからすると、この釈明もまた的外れでしょう。
訴訟前の経緯を知りながら今回の答弁・釈明をしたのであれば悪質ですし、仮に訴訟前の経緯を熟知せずに答弁・釈明したのであれば怠慢のそしりを免れません。
いじめ防止対策推進法は、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、いじめの防止等のための対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めています(6条)。
長崎県は、中3いじめ自死を受けて、二度と同じようなケースが県下で起きないように施策をしていく当事者です。
今回の教育長のようなその場しのぎの発言を繰り返しているのでは不安だけが募ります。
ぜひ今一度、景虎君のケースの事実経過に目を通して、きっちりとまずは事実を把握するところから再スタートして頂きたいものです。