薬事規制当局サミットが日本で初開催、薬害オンブズパースンが対話を要望へ
目次
薬事規制当局サミットが日本初開催
薬事規制当局サミット及び薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)会合が10月23日から26日にかけて日本・京都で初開催されます。
薬事規制当局サミットは今回で12回目。前回は2016年10月、スイスで開催されています。
今回も日米、欧、中、ブラジルなど30を越える国と地域の薬事規制当局の責任者が参加します。
医薬品・医療機器・再生医療等のイノベーションを主要テーマとし、薬事規制の在り方、審査手続き、市販後調査、製品の安定供給、危機管理等の様々な課題について意見交換を行う予定です。
27日は一般公開のシンポジウムも
23日から26日かけての会合は非公開ですが、翌10月27日には、一般に公開されたシンポジウムが開催されます。
シンポジウムは10時から17時45分まで国立京都国際会館(京都市左京区宝ケ池)で開催され、午前中は「革新的技術とその実用化のために」と題して、ノーベル賞受賞者である山中伸弥教授の講演が行われます。
午後は、「薬事規制当局の取組と挑戦」と題して、薬事規制当局サミットの成果についての講演も行われます。
薬害オンブズパースン会議が対話を要望
医薬品の民間監視団体である薬害オンブズパースン会議はこの第12回薬事規制当局サミットに関する要望書を厚生労働大臣に提出しました。
第1 要望の趣旨
1 厚生労働省は、第12回薬事規制当局サミットにおいて、日本の戦後の薬害及びそれに対する民事訴訟並びに規制当局の対応について各国に報告し、参加国規制当局との意見交換を行い、その結果を公表して下さい。
2 厚生労働省は、第11回薬事規制当局サミットにおいてステークホルダーとの対話について意見交換がなされたことを踏まえ、昨年度から開催している「薬事に関するハイレベル(局長級)官民政策対話」の一環として、薬害オンブズパースン会議及び薬害対策弁護士連絡会(薬害弁連)等の民間の薬害防止活動団体との薬害防止をテーマとする対話・協議を行って下さい。
昨年スイスで行われた第11回サミットでは、規制当局の情報公開、ステークホルダーとの対話等の各課題を題材に意見交換が行われましたが、民間の薬害防止活動団体との対話は行われていません。
日本の70年に及ぶ薬害の歴史を振り返ると、薬害防止のために様々なステークオルダーとの対話と協同の必要性があります。
そこで要望の趣旨では、まずサミットにおいて厚生労働省が日本における薬害訴訟の歴史や対応について報告した上意見交換すること、そして厚生労働省が薬害オンブズパースン会議及び薬害弁連と薬害防止をテーマとする対話・協議を行うことを求めています。
第2 要望の理由
1 はじめに
薬害オンブズパースン会議は1997年に設立された薬害防止のための医薬品及び医薬品制度の民間監視団体です。
薬害弁連は、これまで薬害事件を担当してきた弁護士を構成メンバーとして2005年に設立された、薬害防止に取り組む弁護士団体で、その後の薬害訴訟担当弁護士の加入を含めて活動しています。
「薬害」は医薬品に起因する社会的に容認しえない被害と定義でき、「副作用」と区別されています。
戦後初めての薬害事件はジフテリア予防接種禍(1948年、83人の乳幼児が死亡)で、その後損害賠償訴訟(( )内は提訴年)になった薬害の原因製剤だけでもサリドマイド(1963年)、キノホルム(スモン被害1971年)、クロロキン(1975年)、ストマイ(1971年)、クロマイ(1975年)、予防接種(種痘1970年、MMR1993年)、血液製剤(HIV感染1989年、HCV感染2002年)、ヒト乾燥硬膜(ヤコブ病感染1996年)、イレッサ(2004年)、タミフル(2007年)、HPVワクチン(2016年)等があり、これらの訴訟は1963年以来現在まで50年以上、途切れることなく継続しています。
損害賠償訴訟案件以外でも社会問題化した医薬品の有害作用(( )内は社会問題化の年)には、ペニシリン(1956年)、アンプル風邪薬(1965年)、コラルジル(1970年)、ホパテン酸カルシウム(1989年)、コスモシン(1993年)、ソリブジン(1993年)、ベロテックエロゾル(1997年)等があります。
以上を踏まえ、日本では薬害防止は70年近く前から現在進行形の重要な医薬品政策課題と言えます。
このような状況の中で、薬害防止のために様々なステークホルダー間での対話と協働が必要と考え、本要望をする次第です。2 薬事規制当局サミットについて
日本国政府は、始めて議長国となる第12回サミットにおいて、前記薬害の歴史を踏まえ、医薬品の安全性をより確立するために各国の意見を伺い、各国との対話を重ね、世界の実践知をもって医薬品の安全性を確立する必要があると考えます。
そして、本年10月27日に開催されるシンポジウムにおいても、この点についての報告をお願いします。3 官民政策対話について
昨年度から厚生労働省は「薬事に関するハイレベル(局長級)官民政策対話」を開始し、2017年1月30日にはその第1回を開催し、「革新的な医薬品の創成と育成」との観点で製薬業界との対話を行いました。
しかし、官民政策対話については、「医薬品の安全性」という重要な課題もあります。これまでこの課題については、前記薬害訴訟の歴史を踏まえ、薬害被害者との協議(大臣協議、医薬・生活衛生局協議)が行われてきました。
2016年10月の第11回薬事規制当局サミット(スイス)では「規制当局の情報公開、ステークホルダーとの対話等の各課題を題材に意見交換が行われ」たとも報告されていますが、これまで要望の趣旨2で述べた民間の薬害防止活動団体との対話は行われていませんでした。4 まとめ
日本の70年に及ぶ現在進行形の薬害対策の歴史を考えると、薬害防止すなわち医薬品の安全性の確保にとって大事なことは、様々なステークホルダーとの対話と協働ではないでしょうか。
薬害オンブズパースン会議は、これまで欧州や米国において医薬品民間監視活動をしている方々との対話も重ねてきました。
諸外国及び国内の様々なステークホルダーとの対話と協働が医薬品の安全性を高めると確信いたします。
要望の趣旨記載の2つの点について、是非ともご検討頂きたいと考え、要望する次第です。
要望の理由では、先後の日本における薬害の歴史から紐解いて、日本における薬害防止は、70年近く前から現在進行形の重要な医薬品政策課題であると指摘しています。
その上で民間団体との対話、そして協同の必要性を訴えています。
せっかく世界的なサミットが日本で初開催され、厚生労働省が主催するわけですから、日本の薬事行政の問題について自ら触れるとともに、その成果を民間と共有して頂きたいものです。