肝がん患者に対する医療費助成制度を新設へ、厚労省が18年度概算要求に計上
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肝癌患者の医療費助成制度が新設へ
厚生労働省が肝炎ウイルス由来の肝臓癌患者のため、2018年度から医療費助成制度を創設することを決めました。
厚労省が2017年8月28日、肝炎対策推進議員連盟の総会において、2018年度予算の概算要求として13億円計上したことを報告したものです。
肝臓癌患者に対する支援の必要性は、予防接種B型肝炎原弁、薬害(C型)肝炎原弁が長年訴えてきましたが、ようやく実現することになりました。
予防接種によってB型肝炎に感染した患者やフィブリノゲンやクリスマシンといった血液凝固因子製剤によってC型肝炎に感染した患者は、裁判を通じて制定された救済法にて給付金が支給されます。
しかし予防接種以外のB型肝炎患者、薬害以外のC型肝炎患者には給付金の支給がなく、肝硬変・肝癌の治療費に苦しむ患者も少なくなかったのです。
薬害肝炎全国原弁と厚労大臣との昨年の大臣協議においても、厚生労働大臣は、「既に肝硬変、肝がんの患者が受療している治療内容や医療費等実態を把握する調査に着手しており、これを平成28年度中に終え、更なる支援の在り方について、平成29年度の大臣協議までに可能な限り具体的な内容を示す」と回答していました。
そして今年の大臣協議では、九州原告団代表の出田さんから大臣に対して、「肝硬変肝癌患者に対する支援について、具体的な制度について提案して下さい」と回答を求めました。
これに対して、塩崎厚労大臣は、「肝硬変肝癌患者に対する支援については衆参両院で採択されている。これは重たい事実である。長期入院の患者がいたり、高額の医療費かかる患者もいることがわかって来た。現在、概算要求に向けて政府内で検討している。どういう方々に、どういった支援が必要か、どういう財源が必要になってくるか。八月末の概算要求に向けて全力を尽くしている」と回答がしていたものです。
肝癌患者医療費助成制度の内容
今回、厚労省の概算要求で判明した肝癌患者に対する医療費助成制度は、年収370万円未満の患者が対象です。
その上で、4カ月目以降の入院医療費の自己負担を1万円に軽減するもの(現在は4万4000円の自己負担)。
その結果、対象となる患者数は、B型肝炎・C型肝炎合わせて1万人程度が見込まれています。
肝癌患者医療費助成制度の問題点
ではこの助成制度に問題点はないのでしょうか。
まず何といっても、薬害肝炎原弁・予防接種原弁、そして患者会(日肝協)が長年求めてきた「肝硬変患者」に対する支援が抜け落ちているのは大きな問題です。
また肝癌患者に対する支援としても、年収要件をかけるために1万人程度しか対象となりません。ところが、肝癌患者数はB型肝炎が2万2000人、C型肝炎が8万人と推計されています。つまり約90%の肝癌患者は見捨てられることになります。
さらに助成の具体的内容としても、4か月目移行の入院医療費に限定されるため、治療費・検査費などが対象にならず、肝がん患者の負担軽減は一部にとどまります。
肝炎対策基本法の理念を実現した制度へ
この点、平成21年12月に成立した肝炎対策基本法の前文にも、以下のように記されています。
「B 型肝炎及び C 型肝炎に係るウイルスへの感染については、国の責めに帰すべき事由によりもたらされ、又はその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがある」
つまり、先後の血液行政の問題によって日本は肝炎患者数が増加した経緯があるわけですから、国の責任において治療を進めていく必要があるわけです。
2018年度概算要求で判明した「肝がん患者に対する入院医療費の一部助成制度」は、最初の1歩として一定の評価は出来ますが、今後見直ししていくことは必須といえるでしょう。