カルテ一部不開示に損害賠償が認められた事案
薬害肝炎訴訟において給付金が受領できるか、ポイントはカルテ(医療記録)の存在です。カルテが存在している医療機関は、少なくとも患者から問い合わせがあった場合には、誠実にカルテを調査して正確に回答する義務があるというべきです。
薬害肝炎弁護団の問い合わせに「使用していない」と回答しておきながら、1年後に「精査したところ使用が確認できた」と再回答してきた医療機関もありましたが、やはり問題というべきでしょう。
この点、医療機関の杜撰なカルテ管理体制が問われた判決が出ています。
患者側がカルテ隠匿改ざんを主張した事案について、医療機関の損害賠償責任を認めた平成20年2月21日大阪地裁判決です。隠匿改ざん自体は認めませんでしたが、証拠保全手続きおよびその後の訴訟手続きの中で、一部医療記録を患者に開示しなかった以上、債務不履行責任は免れないと判示しています。
なお、医療機関は独立行政法人(以前の国立大学病院)ですから、その問われた責任は大きいというべきでしょう。
被告において,本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を隠匿して原告に開示しないのではなく,被告主張のとおり,被告において本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を紛失したために原告に開示できなかったとしても,被告は,本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を原告に開示できなかったのであるから,診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行責任を免れない。
以上によれば,被告には,本件入院カルテ1ないし6及び本件手術関連記録1を原告に開示できなかった限度で,診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行責任を負うこととなる。
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