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自由と正義

Vol.52 No.7[ 2001年7月号] 特集1・広告自由化と弁護士業務
弁護士HPの活用方法-情報発信についての実践例

1. Webページの現状

弁護士としてのホームページ(以下,「Webページ」という)を2000年4月に開設して1年が過ぎようとしている。

誰が見てくれるだろうという不安もあったが,現在では1日200件から300件,総数6万件を越えるアクセスがある現状である。

Webページ作成環境としては,事務所にはノート型パソコン2台,自宅にデスクトップ1台を設置しているが,Webページの更新は自宅のデスクトップで行っている。帰宅後,就寝前の空き時間を利用して,更新しているが,2,3日の頻度で更新を続けている。

当初は,ハンセン病の国家賠償訴訟の情報発信を念頭に開設したが,やがて消費者事件や少年事件,ひいてはメールによる法律相談,掲示板などの開設に至り,現在コンテンツ的には比較的落ち着いた状況である。

2. Webページの活用方法

私自身は弁護士業務の中で,以下のようにWebページを位置づけ,活用しているつもりである。

1 訴訟経過などの情報発信

まず,第1は集団訴訟における情報の発信である。

ハンセン病国賠訴訟などの集団訴訟においては,司法での解決だけでなく,司法判断をテコにした国会,行政,マスコミ,世論を巻き込んだ解決への運動が不可欠である。もちろん,1弁護士のWebページでの情報発信など微々たるものにすぎないが,1人でも多くの人に問題を理解してもらいたいという情報発信の姿勢は,必要不可欠と思われる。

例えばハンセン病国賠訴訟に関しては,東京・瀬戸内・九州の3弁護団の統一の公式Webページのほか,各地域(東京,神戸,大分など)の支援団体のWebページも存在し,それぞれがリンクすることにより補完しあっている。弁護団としての公式の見解は統一Webページにて,各支援者の集会案内や意見などは支援団体のWebページにて,そして,弁護団の一員が事件を「中」から発信するのが私のWebページにおいてという具合である。

幸いにしてこの原稿は,ハンセン病訴訟の国側控訴断念という歴史的な日に書いているが,熊本判決から控訴断念までの間は,公式Webページ,支援者のWebページにはそれぞれ1日2000前後のアクセスがあり,各Webページへのアクセス数も,数日間で数万件にまで達した。

付随的であるが,原告や支援者の方も私のWebページをよくのぞいてくれているようで,「おもしろかった。」とか,「ここはこういう表現の方が良いんじゃないか。」などの意見をくれており,Webページを通じた交流もなされている。

ちなみに,ITの技術はブロードバンドへと進みつつあるので,これからは動画(例えば,弁護団の入廷シーン,記者会見など)も映像にて見られるようになると思われる。

2 準備書面など訴訟資料の公表

以上に関連するが,準備書面など訴訟上の生の資料の公開も行っている。

例えば,法の華訴訟,ハンセン病国賠訴訟ともに,最終準備書面を含めすべての準備書面を公表している。

訴訟経過中に準備書面などの公開は,依頼者のプライバシーへの配慮などが不可欠であるが,支援者などへの公開・同種事件を受任している弁護士への情報提供という意義があると思われる。

法の華の訴訟においては,東京弁護団の紀藤正樹弁護士のサイトにリンクさせて頂き,東京訴訟の情報は紀藤弁護士のWebページ,福岡訴訟の情報は私のWebページというように棲み分けした上,情報の発信を行うとともに,それぞれの地裁における準備書面をアップしている。

3 記者レク資料として

消費者事件である宗教法人法の華に対する裁判においては,記者レク用の資料としてWebページを活用した。

全国で一斉の110番,重要証人に対する証人尋問期日,判決などにおいて,適宜記者レクを行うが,従来は,マスコミの幹事社に連絡を入れ,レク用資料を複数コピーして配布するなどしていた。

ただマスコミの中には,その問題を継続して取材している記者もいれば,転勤してきたばかりでほとんど無知の者もおり,レクではそのような幅のある記者に説明する必要があるものの,余りに不勉強な記者の初歩的な質問に閉口することが少なくない(例えば,法の華に対する判決日のレクにおいて,「法の華って宗教法人なんですか。」,「足裏診断って何ですか。」など,当然事前に取材しておくような事項まで,レクの場で仕入れようとする。)。

私の場合,事前に幹事社にWebページを見るように伝えておき,その上で記者レクを行うようにしたところ好評で,それ以来,記者が自発的に閲覧してくれるようになった。

4 少年事件・消費者問題での情報提供・意見表明

個人的に力を入れている分野での情報を頻繁にアップするようには心がけている。

少年事件については,付添人経験交流集会における分科会のテープ起こしをアップするほか,日本評論社から福岡県弁護士会で発刊予定の「付添人マニュアル」の自己執筆部分を出版に先駆けてアップしている。

また,少年法改正にからむ個人的見解なども適宜載せるようにしている。

その他,消費者委員会主催の多重債務110番,欠陥住宅110番などの情報,子ども権利委員会主催の集会などの日時・場所の広報なども行っている。

5 迅速性

以上のように,基本的に関心のある分野などの専門情報をかみくだいて,伝えることに重きを置いているが,一方で,なるべく早く更新することを心がけている。

法の華の判決は午前10時であったが,判決要旨などの配布がなかったため,判決文を分析し,判決内容・解説をその日の午後までに載せた。

また,ハンセン病訴訟では,午前10時の判決言渡し後直ちに,判決要旨・骨子が裁判所から配布されたので,やはり午前10時後直ちにWebページに載せた。

ハンセン病の判決後,3弁護団・原告・支援が東京に結集して,控訴断念のための行動を行った。支援は平日の空いた時間に行動を行うわけであるが,当然,すべての時間帯は現場にいられない。支援の方から「仕事に戻っている間の情報を,先生のWebページで速報してくれないか。皆,やきもきしていてもたってもいられないんです。」との話を頂いた。

そこで,控訴断念行動の山場2日間は,2,3時間おきに,Webページのトップページのコラムのコーナーに速報情報を流し続けたところ非常に好評であった。

なお,パソコンを開くことはできないため,アイモードのパケット通信(携帯電話によるメール)で,「速報」を自宅のパソコンに送り,家族の協力でただちにWebページに載せることができたものである。

3. メールによる相談(注:現在、メールによる法律相談は休止中です)

1なお,試験的に無料のメールによる法律相談を行っている。メール法律相談は牧野二郎弁護士が先駆的に始められ,現在はメールによる相談を掲げているWebページも増えているようである。個人的に牧野弁護士とお話しする機会があり,励ましを受け,それ以来メールによる相談にも力を入れてきた。

メール相談はまだ発展途上の分野である一方,ノウハウがあまり伝えられることも少ないようであるので,気づいた点を指摘してみたい。

2 現状

現在は,無料で行っているが,注意事項を増やし,よくある相談についてはQ&Aを設けている。また負担にならないように,3分の1程度にしか返答できないこと,緊急の相談は弁護士会窓口に行くべきことなどを明記している。

回答内容としては,受任を前提としていないため,基本的な事項を指摘した上,住所地の記載のある相談者には,各地の弁護士会の窓口を紹介することにとどめている(日弁の地方弁護士会のコーナー)。

相談者は,東京,大阪など大都市からの相談が多く,全国のネット普及率を反映しているようである。メール相談から受任事件に至ったケースはほとんどない。

相談内容としては,Webページのコンテンツを反映してか,多重債務,医療過誤の相談が多く,その他家族関係(離婚,相続),交通事故,内容証明の書き方など,通常の法律相談より簡易な内容が多い。

3 雑感

メール相談を1年近く行って感じるところは,「危険性」と「労力」である。

まず「危険性」とは,メールによる相談の情報が片面的であることに由来する。通常の30分の相談であれば,依頼者の顔を見ながら,適度に話しをききながら必要情報を質問に聞き出すわけだが,メールの場合,相談者が一方的に情報を送りつけてくるわけで,中途半端な回答にならざるを得ないからである。中には「回答には一切責任を持ちません。」と標榜されている方もいるようであるが,弁護士が法律相談に対して,弁護士と回答する以上,無責任ないし誤った回答の場合には,責任は免れないと思われる。しかもその回答は,「メール」として相談者の手元にきちんと残ってしまう。その意味では,相談者からの苦情や弁護過誤の可能性も決して低くないし,それなりのノウハウも必要と思われる(例えば,しばし無料で行った上,有料化を試みるなど)。

次に,「労力」は,以上の危険性を回避するための気苦労はもとより,真剣でない相談も少なくなく,処理が煩雑であるということである。

私の場合,ネットの特性である「匿名」による相談も受け付けているので,真剣さに欠ける相談(例えば,判例百選の事例をそのまま大量に送りつけてくる相談)や明らかに探るような相談(例えば,同業者ないし隣接業者からのものと思われる相談)なども少なくない。

4 将来性

以上をふまえて私自身が一つ考えている方向性としては,有料化した上で,相談者と2,3回のやりとりをすることである。つまり,双方向性にすることにより,通常の相談と同様の「聞き取り」を入れるわけである。メール相談の場合,相談料を5,000円以下で行うことが多いようであるが,例えば,以上の危険性と労力を考えた場合,十分通常の相談料5,000円で良いと思う(なお,ネット相談における相談料の徴収にもノウハウが必要と思われるが,牧野二郎弁護士によると,「振込口座を指定しているが,意外ときちんと振り込んできている。」とのことであった)。

また先ほど指摘した労力を少なくするためには,「匿名」での相談は受け付けずに,住所・氏名・連絡先を明記させるなどの対応も可能であろう(もっとも,その住所・氏名が正しいものである保証はない)。

東京,大阪など大都市圏の法律事務所において,それなりの対応を取れば,需要をつかむ可能性はあるかもしれないし,相談から受任に至るケースも今後も増えると思われる(例えば,弁護士の数の多い,一般事務所において当番制度にするなど)。

4. Webページは広告か?

弁護士の業務広告に関する規定は,第2条において「広告」の定義として,「この規定における広告とは,弁護士が自己又は自己の業務を他人に知らせるために行う情報の伝達及び表示行為であって,顧客又は依頼者となるように誘因することを主たる目的とするものをいう。」とされている。そして,周知のように広告解禁により弁護士Webページの開設が可能になったと一般的に理解されている。

しかし,私自身は,「広告」という発想はなく,「情報発信」と「個人の意見表明」に力点を置いている。弁護士会の情報を伝達すること,消費者事件の解説を紹介すること,集団訴訟の状況を支援者含め,広く世論に訴えかけること,特定の分野・問題に1個人としての見解・論文を表明することなど,「顧客となるように誘因することを主たる目的」とはしていないからである。

「Webページ=広告,したがって,規制が必要である・・」との発想を持つ弁護士(単位会)が少なくないが,Webページの本質を見誤るものであろう。弁護士が開設するWebページがすべからく広告であるという論拠を押し進めるならば,弁護士が自己の業務に関連して書籍を出版すること,テレビ・ラジオなどのメディアに出演することなどすべて「広告」となりかねない。

この点,日弁連は(「弁護士広告(業務広告規定の解説)・日弁連弁護士業務の広告問題ワーキンググループ編・社団法人商事法務研究会),「弁護士が個人のホームページを持ち,弁護士自身の情報を提供することは,その内容が業務に関することであれば,目的は顧客誘因にあることは明らかですから,広告に該当します。」(同書・26頁)とするが,仮に弁護士の開設するWebページがすべて「広告」であるとする趣旨であるならば,明らかに問題のある見解である。

また仮に,日弁のように,Webページをすべからく「広告」と位置づける立場にあっても,広告原則自由の原則を貫き,例外・制限(弁護士の業務広告に関する規定)を幅広く運用すべきでないだろう。

法曹三者の中でも,在野である弁護士こそ,Webページを有効利用する余地が高いはずであるにもかかわらず,弁護士Webページが全体として一番貧弱であることは,ノウハウ不足や弁護士の努力不足の点も否めないにしろ,日弁連の今までの「広告規制」に対する対応にもその責任の一端があることを指摘しておきたい。

5. 利用者の視点にたって

この原稿依頼を受けて,他の弁護士Webページにも200以上訪問してみた。業者に依頼しているところ,ご自分でされているところ,その内容も様々だが,以前よりもかなり増えているようである。また司法修習生でWebページを開設している者も少なくなく,今後,特に若手を中心に弁護士Webページは増加していくだろう。

内容も,前述の紀藤正樹弁護士のWebページのほか,非常に充実しているWebページも少なくなく,感心させられることが多いとともに,参考にさせて頂いている。

一方で,プロフィール,取扱分野,事務所所在地だけを記載するような内容の薄いWebページも少なくない。しかも取扱分野として,「民事一般,刑事一般,契約書作成・・・」などとすべてを列記するだけの紹介もある。消費者の視点からするならば,取扱分野を抽象的に列記するだけでなく,具体的内容を盛り込んだ内容にするなどの工夫が必要だとも思われる。

弁護士のサイトが政治家のサイトより貧弱であり,おもしろくないという現状は(政治家の方が有権者の目を意識しているので,それなりにおもしろい),広い意味での「司法消費者」からすると,異常としか言えない。

1年間サイトを運営してきて思うのは,単なる事務所宣伝の「広告」としては,現時点では,Webページは余り役立つ余地はないという点である。ネットの家庭への普及率次第だが,少なくとも現時点では,従来通りの電話帳広告の方がよほど飛び込みの依頼者が多いだろう。そもそも「事件受任にあたって,依頼者の紹介を重視する」という従来の弁護士の発想からも,Webページによる広告はなじまないかもしれない。

だからこそ,私自身は「広告」という発想ではなく,これからも,好きなことを好きなように伝える「情報発信の場」としてWebページを利用していこうと考えているし,今後の弁護士Webページの目指す一つの方向ではないかと思う。

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