福岡の弁護士 古賀克重法律事務所

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インターネット被害対策

福岡県弁護士会の法律相談においても、インターネット被害を巡る相談が増えてきました。また、「インターネット被害は詳しくないから、相談にのってくれないか。」と知り合いの弁護士から依頼を受けることも少なくありません。

弁護士や法律事務所のWebサイトは今では普通になりましたが、一昔前までは弁護士のWebサイトも広告として禁止されていたことをご存じですか?

2000年10月1日にようやく日本弁護士連合会が弁護士広告を解禁し、弁護士のWebサイトも可能になったのです。弁護士古賀克重は福岡県内で初めて弁護士Webサイトを立ち上げました。また福岡県弁護士会のホームページ委員会の初代委員長として、福岡県弁護士会Webサイトの作成・更新も当事務所が行っていました(現在は専門業者に委託しています)。

このような15年に渡るインターネットとの関わりを通じて、ここでは、よくあるインターネット被害を巡る法律相談をピックアップするとともに、最近の法令・判例の傾向を説明していきます。対象としては、インターネット被害になじみの薄い被害者の方を想定した内容です。

Q1Webページによる名誉毀損を受けた場合~表現者に対する責任追及

第三者がWebページ(ホームページ)を立ち上げ、私の名前や写真を公開して、まわりくどい言い方で非難・中傷を繰り返しています。内容からして、私を中傷することだけを目的としており、名誉毀損以外の何者でもないと思います。このWebページ(ホームページ)を削除したり、第三者の住所氏名を知ること、ひいては損害賠償請求しようと思いますが、可能でしょうか。

キーワード:プロバイダ責任法、名誉毀損、刑事、民事、仮処分

用語:「プロバイダ」:プロバイダとは、われわれをインターネットにつなぐ窓口となる接続業者です。正式にはISP(インターネット・サービス・プロバイダ:Internet Service Provider)といいます。イン ターネットを利用するには、まずプロバイダに加入する必要があ るわけです。加入したプロバイダの提供するアクセスポイントに電話をかけると、インターネットにつながります。
「Webページ、ホームページ」:目次や表題の役割を果たすタイトルのページをホームページといいます。ホームページを起点として、様々なページに巡回できるのが通例です。それらを総称してWebページと言います。ホームページとWebページを同義で使うこともあります。ここでは特に断りのない限り、同義で使用しています。

要旨:一般の名誉毀損相談と異なるのは、責任追及の相手方が特定しにくいという点だけである。従来通り、刑事と民事の手続きが考えられるが、民事上は、平成14年5月に施行されたプロバイダ責任法を有効利用するとともに、仮処分の活用が考えられる。表現者を特定できれば損害賠償請求は、通常事件と何ら代わりはない。

A1当該ホームページの管理者(以下、「管理者」といいます)が分かれば、管理者に対する警告、損害賠償請求などが可能です。この点は、ホームページという「媒体」が利用されているだけで、文書・画像という従来の「媒体」を通して名誉毀損がなされた場合と何ら代わりはありません。あえて言えば、証拠たる当該ホームページを保存するなどして、確保しておく必要がある程度です。

問題は、管理者が匿名であり、その住所・連絡先はおろか名前さえ不明の場合です。この「匿名性」こそがインターネット被害の特殊性であり、問題を「難しそうに」しているところです。

法律上は、民事上の手続きと刑事上の手続きが考えられるところです。

刑事上は、加害者不詳にて刑事告訴を行い、プロバイダーに対する捜索差押え令状などで、管理者を特定してもらう方法が考えられます。しかしながら、警察の対応能力の問題もあり、よほど社会的に耳目を集めない限りは、迅速には警察は対応してくれないことが予想されます。そして、その間にも当該ホームページを通して、「名誉毀損」状態は継続してしまいます。

では、民事上、迅速な手続きは取れるのでしょうか。

用語欄で説明したように、ホームページを利用している以上、何らかのプロバイダを利用してインターネットに接続しています。そこで、そのプロバイダから管理者を特定する情報を入手することが考えられますが、一方で、プロバイダには、通信の秘密を守る義務がありますから、従来プロバイダは特定する情報の開示には消極的でした。

ところがプロバイダ責任法が施行され、その4条は、「権利侵害を受けた者は、その権利侵害を行った発信者の情報の開示を一定の条件のもとプロバイダ等に請求することができる」と定められました。この条文をもとに、プロバイダに対して、管理者を特定する情報の開示を求めることが可能になりました。管理者を特定できれば、損害賠償請求が可能です。

また、名誉侵害・プライバシー侵害を根拠として、当該Webサイトの削除を求める仮処分を行うことが考えられます。実務的にも、著名掲示板に対する大手企業からの仮処分決定が出ています(東京地裁平成13.8.28野口忠彦裁判官)。

Q2Webページの削除や掲示板の書き込み削除を求める仮処分について

Webページを削除したり、Webページの中の名誉毀損やプライバシーを侵害する書き込みを削除したりする仮処分手続きについて、もう少し詳しく説明してください。

キーワード:仮処分、人格権、名誉権、プライバシー権

要旨:削除を求める仮処分には法律家の援助が不可欠と思われる。法的根拠としては、名誉権やプライバシー権に基づく妨害排除請求権と考えるのが通説である。成立要件としては、故意・過失は不要であるため、プロバイダに対する仮処分も損害賠償請求よりはハードルが低い。

A2Webページや掲示板の書き込みによる悪質なプライバシー侵害、名誉権の侵害事例が後を絶ちません。その際に有効なのが仮処分手続きです。仮処分申請には法律家の援助が不可欠と思われますが、ここでは、法的根拠、成立要件、対象(相手方)、範囲などについて説明します。

法的根拠としては、人格権としての名誉権、人格権としてのプライバシー権ととらえるのが通説です。名誉権ないしプライバシー権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権が法的根拠となります。

成立要件として、故意・過失等の主観的要件は必要ありません。名誉権は、物件と同じく排他性を有する権利と解されているからです。

対象(相手方)としては、名誉毀損やプライバシー侵害の表現を行っている本人、プロバイダの2種類が考えられます。前述のように、インターネット被害の特殊性である匿名性から、表現者の特定が困難な場合も多いと思われます。その祭には、Q1で述べたように、プロバイダに対して発信者情報の開示を求める手続きが事前に必要になります。

一方、プロバイダに対する差し止め請求は、比較的容易に行えます。プロバイダに対する損害賠償請求を行うためには、プロバイダの故意・過失を立証しなければなりません。ところが、前述のように、仮処分の場合には、故意・過失を立証しなくて足りるからです。

削除が認められる範囲は、裁判所の認定によりますが、名誉毀損・プライバシーが侵害されている範囲となります。Q1の相談のように、Webサイト自体が、特定の個人の名誉毀損を目的とするようなものである場合は、Webサイト全体の削除(作為)が認められる余地があります。一方、一部のファイルのみに名誉毀損表現・プライバシー侵害表現があるような場合は、その一部のみの削除(作為)が認められることになると思います。

Q3プロバイダ責任法とは~発信者情報と開示依頼書書式

プロバイダ責任法は、プロバイダの損害賠償の範囲を限定したものにすぎないと言われていますし、批判も多いようです。表現者の特定に、本当に役に立つのでしょうか。開示請求書の文案や具体的な解決事例があれば教えて下さい。

キーワード:プロバイダ責任法、損害賠償の限定、発信者情報の開示

用語:「プロバイダ責任法」:「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といい、平成14年5月27日から施行されています。一定の条件のもとでのプロバイダの責任の制限と発信者情報の開示を2本の柱としています。

要旨:プロバイダ責任法の目的は、総務省課長補佐の見解からも明らかとおり、プロバイダの自主的な対応を即す点にある。誠意の見られないプロバイダに対しては、被害者としても、断固とした対応を求めるべきであり、被害回復に法的な手当がなされるべきである。

A3従来は、法的には通信の秘密を理由に、実際はどのような場合に削除すべきか自主的な判断を回避してきたプロバイダの姿勢により、名誉毀損表現がなされたインターネット被害者保護が極めて不十分でした。

ところが、プロバイダ責任法では、「情報が他人の権利を不当に侵害しているという相当な理由がある」、もしくは、「削除に同意するかを発信者に照会し、7日以内に返答がない」のいずれかの場合は、発信者の同意なしに削除しても、プロバイダは責任を負わないと規定されました。つまり、プロバイダに「行動指針」を与えたため、今までのように名誉毀損表現がなされたことを指摘された後も、漫然と放置することは事実上困難になりました。

この点、法律施行当時の総務省の大村真一課長補佐は、インタビューの中で、「プロバイダ責任法の狙いは自主的な対応を即すことにあります。もちろん、これまで自主的な対応をとってこなかったプロバイダは、プロバイダ責任法の施行によって態度を改めなければならないでしょう」と指摘しています。また、法制度化の背景として、「インターネットによる権利侵害による被害が著しく増大していたため、国民が安心してインターネットを利用できるように制度的な対応が求められていた」(NBL・730号・28頁・総務省大村、大須賀、田中)とも明示しています。

このようにプロバイダ責任法が、インターネット被害の深刻な広がりを受けて立案されたことは明らかです。

社団法人テレコムサービス協会が、発信者情報開示手続きを明らかにするとともに、発信者情報の開示依頼書のモデル案を公開していますので、ぜひ活用してください。

Q4プロバイダとの交渉事例

プロバイダ責任法の施行によって、プロバイダの対応に変化は見られるのでしょうか。施行後に、プロバイダと交渉して解決した事例があれば教えて下さい。

要旨:プロバイダ責任法の目的はプロバイダの自主的な対応を即す点にあるところ、。実は、法律の施行後、プロバイダの対応にも変化が見られる。この法律を有効利用していきたい。

A4Q3で紹介した社団法人テレコムサービス協会のWebページでも、プロバイダ責任法についてはかなり詳細に説明されるとともに、「プロバイダ責任法ガイドライン」を作成し、「このガイドラインは、権利を侵害されたと主張する者からの要請に対して、プロバイダの取るべき行動基準を明らかにすることを通して、プロバイダによる迅速かつ適切な対応を可能にするための実務上の指針とするものである」と明示しています。

このように、プロバイダ責任法施行後、プロバイダ業界も自主的な対応に追われており、その意味で変化が見られています。まさに通産省の指摘するように、「これまで自主的な対応を取ってこなかったプロバイダは、態度を改めなければならない」状況なのです。

それでは、プロバイダ責任法施行以降に、プロバイダと交渉して解決した事案をご紹介します。

ある事件の依頼者を誹謗中傷することだけを目的とするWebページ(ホームページ)が立ち上げられました。そのサイトは、無料プロバイダのサービスとともに、大手プロバイダのサービスを利用し、複数のWebサイトを立ち上げるという極めて悪質なものでした。

まず、右無料プロバイダに対して、「名誉毀損がなされており極めて悪質なサイトが運営されている」旨をメールで警告したところ、直ちに反応があり、右Webページ全部を自主的に削除するとともに、管理者のメールアドレスを自主的に開示してきました。

さらに大手プロバイダのサービスを利用したWebページに対しても、発信者情報の開示を求めたところ、最初は、極めて形式的な以下のような返答がなされました。

こんにちは、Yahoo! JAPAN GeoCitiesです。(注:現在はGeoCitiesありません)
Yahoo! JAPAN GeoCitiesのご利用ありがとうございます。
下記のお問合せをいただきましたが、ジオシティーズでは当事者同士による話し合いの解決を尊重しております。
ホームページ上にホームページの開設者様のメールアドレスが掲載されておりますので、そちらへ直接お問合せください。
これからもYahoo! JAPANをよろしくお願いします。

このプロバイダ責任法の趣旨を理解しない、無責任な返答に対して、さらに弁護士名でメールを出したところ、変化が見られ、以下のような返答がなされるとともに、その直後にWebページ全部が削除されました。

こちらはYahoo!ジオシティーズ バイオレーション担当です。
ご連絡いただきましてありがとうございます。
申告された内容についてはYahoo! JAPAN 利用規約 及びジオシティーズ ガイドラインに照らしてチェックさせていただきます。

また、申し訳ございませんが、利用規約に記載しておりますように、Yahoo!JAPAN はプライバシー保護の観点から、個人情報の開示には応じておりませんが、法令に基づく正式な照会等を受けた場合には、照会元の機関に対して必要に応じ回答する場合もあります。http://www.yahoo.co.jp/docs/info/terms/

あわせてこちらの「プライバシーの考え方」のページもご参照ください。
http://privacy.yahoo.co.jp/privacy/jp/
今後ともYahoo!ジオシティーズをよろしくお願いいたします。

ここでいうところの「法令に基づく正式な照会等」については、プロバイダ責任法に基づく照会も含まれるとみるべきでしょう。

この事案では表現者に対する刑事告訴、訴訟提起を準備していましたが、今後は、より積極的にこの法律を利用して、プロバイダに対して開示を求めるとともに、それでもプロバイダの対応が不十分な場合は、プロバイダに対する責任追及も考えてしかるべきでしょう。

「インターネット上の自由であるべき情報の流通について、プロバイダを私的な検閲官にすべきでない」という考え方も根強く主張されています。しかしながら、現状のインターネット上の表現における被害者保護のシステムは、極めて不十分であり、やみくもに原則論だけが強調されているきらいがあります。前述の事案など「醜悪な表現によるいたたまれない名誉の毀損」がなされていましたが、「表現の自由」に名を借りた権利侵害に対するインターネット被害者救済に対して、法律家も、もっと目を向けるべきです。例えば、刑事司法の分野においては、「推定無罪」、「デュープロセス」などが強調される余り、長年に渡って被害者の権利がないがしろにされてきた反省がありますが、インターネットの分野においても、あまりに原則論を強調する余り、現実に被害を受けている無数の人たちの権利をないがしろにしているきらいがあるのではないか・・・最近、特にそのように感じます。

特に、大手プロバイダは、専門知識を備えた多数の社員を抱え、莫大な利益をあげています。インターネット被害者と思われる者からそれなりの申告を受けた場合に、一定のルールに基づく自主的判断を行い、表現を削除するか否かの判断を課したところで、過大な負担を強いるものではありません。また、「その程度の負担」を強いたところで利益に解消できるものですし、表現の自由を萎縮させる効果といっても、それは「極めて観念的なもの」にとどまり、表現の自由の実質的な保護に欠けるところは何らないというべきです。

Q5掲示板における名誉毀損・プライバシー侵害~削除の依頼方法

ある掲示板に、私の名前・住所・生年月日を書き込まれて困っています。このような書き込みの削除依頼方法について、教えて下さい。

A5氏名住所などを掲示板において無断で公開することは、プライバシーを侵害する違法な行為です(裁判例もあります)。したがって、掲示板の管理人のメールアドレスが分かれば、そのアドレスに対して、問題の書き込みを特定した上、その書き込みのどの部分が、どのように問題かを指摘して(設例の場合ですと、氏名・住所の公開はプライバイシーを侵害すること。名誉毀損的な表現であれば、どのような表現が、どのように名誉を毀損するか)、書き込みの削除を依頼してください。

常識的な掲示板の管理者であれば、それなりの対応をしてくれると思われます。

Q6掲示板における名誉毀損・プライバシー侵害~管理者の責任

Q5に従い、掲示板の管理者にメールを出しましたが、「自主的に話し合いで解決してください」というだけで、何の対応も取ってくれません。掲示板の管理者の不誠実な対応に我慢がなりません。Q1で説明した表現者に対する責任追及、Q2で説明した掲示板上の書き込みの削除を求める仮処分以外に、掲示板の管理者に対する損害賠償請求は可能でしょうか。また、裁判例があれば教えて下さい。

キーワード:名誉毀損、管理者の責任、動物病院対2ちゃんねる事件判決

A6名誉毀損表現が書き込まれているにもかかわらず、管理者が漫然と放置する場合には、損害賠償請求が可能です。Q5に従い、メール、内容証明などにより管理者に対して、削除を要請しても応じない場合には、Q2で説明した仮処分のほか、管理者に対する損害賠償請求が可能です。

この点、「動物病院対2ちゃんねる事件」が参考になります(判例タイムス1104号85頁・判例批評、NBL742号・6頁、いずれも町村泰貴教授・参照)。

掲示板において、名誉を毀損する発言が書き込まれたにもかかわらず、管理者が発言削除などの義務を怠ったため、精神的損害等を被ったとして不法行為に基づく損害賠償を請求するとともに、名誉毀損発言の削除を求めた事案です。

1審東京地裁判決、2審東京高裁判決は、いずれも名誉毀損を認めるとともに、管理者は、名誉毀損に当たるかどうかの判断をし、名誉毀損に当たる発言を削除する義務を負っているとして、管理者に400万円の支払と発言の削除を認めました。

掲示板の管理者やプロバイダに対して損害賠償義務を認めることは、前述のように、表現の萎縮につながるし、プロバイダを私的検閲官とするものであるとの批判もあります。

しかしながら、本件の具体的事例に照らすと、極めて妥当な判断というべきであって、実務感覚として違和感はありません。インターネット被害の回復としては、この裁判例を有効に活用するとともに、事例を集積していくことが大事でしょう。

Q7忘れられる権利

ヨーロッパで「忘れられる権利」が認められたと聞きましたが、どのような内容なのでしょうか。また日本では認められないのでしょうか。

私は恥ずかしながら以前、痴漢で逮捕されて実名報道され会社を辞めざるを得ませんでした。5年経っても私の名前を検索すると逮捕された時の新聞記事がヒットするため再就職することの支障になっています。

キーワード:忘れられる権利、犯罪報道

A7忘れられる権利とは、インターネット上の情報について個人がどこまで自己コントロールできるかという現代の新しい問題です。

海外、特にヨーロッパでは「過去のヌード写真」「犯罪歴」の削除を求める裁判が相次ぎました。そして2014年5月、欧州司法裁判所が「right to be forgotten」を認めたため世界的に大きなニュースになったものです。
日本では大手プロバイダが自主的に削除に応じているため、裁判所で認められた例はほとんどなく、まだ社会問題化しているとは言いがたい状況です。
過去の痴漢報道ですが、拡散していると思われるため、なかなか難しい問題です。次のQで大手プロバイダの削除基準を概観します。

Q8Yahoo!(ヤフー)の削除基準

ヤフーが削除要求の基準を定めたと聞きましたがどのような内容なのでしょうか。

キーワード:プロバイダ削除基準、Yahoo!(ヤフー)

A8まずYahoo!(ヤフー)は2014年11月、有識者会議を設置して個人から検索結果の削除を求められた場合の基準の検討を開始しました。そして2015年3月30日、検索結果の削除を行う基準を初めて公表しました。
基本的には従前通り、裁判所の司法判断がないと削除には応じませんが、性的画像(第三者の閲覧を前提としていない私的な性的動画像が掲載さている場合)、特定人の生命・身体に対する具体的・現実的危険を生じさせうる情報については削除を行います。

Webページへのリンク情報の非表示については、「特に理由なく一般人の氏名及び住所や電話番号等が掲載されている場合」、「特に理由なく一般人の氏名及び家庭に関する詳細な情報が掲載されている場合」、「一般人の氏名及び秘匿の要請が強い情報(たとえば、病歴等)に関する情報が掲載されている場合」には検索結果の非表示措置が取られます。

Q9Google(グーグル)の削除基準

グーグルが削除要求の基準を定めたと聞きましたがどのような内容なのでしょうか。

キーワード:プロバイダ削除基準、Google(グーグル)

Google(グーグル)は削除基準として、「児童の性的虐待画像」、「法的に有効な削除リクエスト(デジタル ミレニアム著作権法の規定を満たす著作権侵害通知など)を受けたコンテンツ」は、検索結果から削除するとしています。
また、削除対象となる可能性のある情報として、「国が発行する識別番号」、「銀行口座番号やクレジットカード番号」、「署名の画像」、「当人の承諾なしにアップロードまたは共有されたヌードや露骨な性描写を含む画像」を上げていますが、「生年月日」「住所」「電話番号」について一般に削除対象にならないとしています。

Google(グーグル)を巡る裁判例としては、埼玉地裁平成27年6月25日決定が、逮捕報道について「事件後の時間の経過や歴史的・社会的意義、当事者の影響力などを考慮し、逮捕歴を公表されない利益が上回る場合は、削除が認められる」との基準を示しました。その上で、当該事件は、歴史的・社会的な意義はないこと、男性は公職の立場にはないこと、罪は比較的軽微だったことから、事件から3年経過してネット検索にかかる公益性は低いとして削除を命じています。

Q10インターネットオークションのトラブルと被害回復(1)

インターネットオークションでバックを落札して、入金しましたが、バックが送られてきません。メールで督促しても、「申し訳ありません。もうしばらくお待ち下さい。」と丁寧な返答があるだけで、全く商品を送ってこようとしません。どうも他にも同じような被害にあった人がいるようですが、どうすればよいでしょうか。

キーワード:インターネットオークション、詐欺、被害回復

A10オークションを直接念頭に置いた法律は、古物営業法しかありません。しかしこの法律は、古物営業者に対して、営業にあたり、営業所所在地を管轄する公安委員会の許可を要求しているものであり、警察法的な規制にしかすぎません。一般の方が参加するオークション、ネットオークションを規制する法律はなく、民法・商法・刑法などの一般法が適用されることになります。

ネットオークションで商品が送られてこない、送られてきた商品が説明と違う・・・などのトラブルが頻発しています。これらのトラブルは、大きく3つの形態に分類できます。

  • 詐欺まではいかないが、悪質な契約違反ないしモラル違反の場合
  • 詐欺である場合
  • 売主が倒産するなどした場合

アの場合は、売買契約を解除して、代金の返還を求めることになります。このようなケースでは、内容証明郵便で返金を請求する、小額訴訟を起こす、調停を起こすなどが考えられます。相談窓口としては、弁護士、福岡市消費生活センター、福岡県消費生活センターなどを参考にしましょう。

イの詐欺といっても、売主の主観ですので、アとイが判然としないことが多いと思われます。しかしながら、商品が送られてこないので、契約解除に基づき、代金の返還を求めているのにもかかわらず、売主が速やかに応じない場合、他にも同様な被害者が多数いる場合などは、限りなくアに近いと評価できるでしょう。このような場合は、刑事告訴も念頭におくことになります。

ウの場合は、通常の商取引と同様に、被害回復が極めて困難になります。

Q11インターネットオークションのトラブルと被害回復(2)

売買契約を解除して代金の返還を求めていますが、返答がありません。どうも、売主が倒産しているようで行方不明です。このような場合、インターネットオークションを主催していた業者(オークションサイト)に対して、責任追及することはできないのでしょうか。

キーワード:インターネットオークション、インターネットオークションサイトの法的に責任、契約

A11インターネットオークションが活発になるにつれ、悪質な売主による詐欺まがいの被害が頻発しており、弁護士会の法律相談や消費生活センターへの相談も増えているようです。その際の質問として多いのが、「オークションサイトに責任はないのか・・」というものです。

インターネットオークションサイトの約款・ガイドラインをみると、「利用者間の交流の場と品物の売買の機会を提供するものです。」など、場を提供しているにすぎず一切の責任を負わないとするものが大半です。

しかしながら、「場を提供しているにすぎない」というのは、医療において「医師は患者のために全力をつくせば良い」とか、建築において「施主の言い分を十分に聞けばよい」とかの標語であって、なんら当事者間の関係を法的に説明するものではありません。

各オークションサイトは、「出品システム利用料」「落札システム利用料」などの名目で、売主・買主から金品を受領することによって利益を得ているのですから、「利用者の間には提携、共同事業、フランチャイズ、代理店、業務委託といった契約関係はいっさい発生しません。」などと一方的に表示することには何ら意味がなく、利用者と各オークションサイトとの間には、無名契約としての仲介契約が成立していると考えるのが妥当です(同旨・NBL730号・「インターネットオークションの法的分析(1)・17頁・河野俊行教授)。

一方で、この仲介契約の当事者であることから一律に、各オークションサイトがすべての責任を負担するというのも困難でしょう。各システムを利用した仲介が契約の本旨であって、商品の品質や商品引渡しなどを保証するものではないからです。オークションサイトが法的責任を負担するのは、仲介契約に付随する信義則上の義務に違反する場合、例えば、各利用者から苦情が相次いでいるにもかかわらず、漫然と出品を放置した場合と考えられます。

以上のように、まず第一には、契約当事者間での解決が大前提となり、オークションサイトに対する請求する余地もありますが、ある程度限定的な場合になるでしょう。

なお、現在では、ネットオークションサイトに対する厳しい目を受けて、不十分とはいえ補償制度を設けています。

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